誰もがきっと小野田くんに自分を重ねようとしたのかもしれない
弱虫ペダルというアニメ化された大人気漫画をご存知でしょうか。
この作品がきっかけで2013年頃よりロードバイクブームが加速したと言われています。
この黄色いジャージを着たメガネの少年が小野田坂道くんというこのお話の主人公です。
小野田くんはママチャリで千葉から秋葉原に通う趣味と実益を兼ねた週末を過ごしたことで、結果天才ヒルクライマーとして 開花したスーパー初心者です。
小野田くんは秋葉原までの電車賃が片道700円くらいと言及しており(記憶違いかもしれない)、つまり一回につき母親から1500円の交通費をもらっていると考えられます。
週1回×4.2週=6300円/月×12ヶ月=75600円/年となります。
交通費を浮かせるために秋葉原へ自転車で通う小野田くん。これを数年続けており、脚力と内部留保を貯めていたのです。
内部留保に関してはガチャガチャを回したり、アニメのDVDやCDを買っていたとのことで残ってはいないようですがこれはなかなか王道な節約術です。
私もこの小野田式節約計上イメージで得た金銭で自転車を強くしています。
閑話休題、私も例に漏れずこの漫画を読みアニメも全シリーズ観ました。
とてもエキサイティングで面白く大好きな作品の一つです。
この作品の影響で自転車女子が増えたと言われ、弱ペダ女子とか呼ばれていたようです。
私もたまに弱虫ペダルですか?と聞かれることがありますが、違います。
私はオタクなのですが腐女子的なオタクではなく、どちらかといえば萌え豚寄りのオタクですのでイケメン美少年よりも美少女がゆるい日常を過ごすアニメを観てブヒブヒ言っている感じです。
こちらが、私にとってのバイブル的作品「ろんぐらいだぁす!」。
女子大生がキャッキャウフフと楽しくロードバイクに乗るお話。
いつも着ているジャージはこの作品のコラボジャージです。オタクを誇りに思っていますし、これを着てレースで優勝したのでしばらくはオタクの面目躍如です。
チームメンバーにはこのジャージのせいで大火傷させたかもしれませんが、そこは目を瞑り総括して全て良かったです。
みんなが優しくて、よかったー!
しばらくは何度でも自慢したいです。
だって人生でなかなかこんな機会は無いですから、いいじゃないでしょうか。最初で最後かもしれません。
話を弱虫ペダルに戻しますと、小野田くんは初心者ながらほんの二ヶ月経験を積んで先輩を差し置きインターハイ出場メンバーになり、最終的に総合優勝を取ります。
そこに、努力やチームワークの素晴らしさや成長を感じることで心が震えるのです。
しかし、同じ初心者として思うところがたくさんあります。
特に心を叩かれたのはこの場面です。
合宿中に踏み込む力が強すぎて衝撃に耐えきれなかったフラットペダルが破損。
絶望を浮かべる小野田くん。
「ペダルが棒だけになってしまった…!」(とは実際には言っていません)
立ち往生しているところに先輩が現れます。
「貸してやるよ」(ドサァ)
と、SPD-SLペダルとビンディングシューズを渡されるのです。
「ありがとうございます!」(カチャカチャ)
「行って来ます!」(シャーーーーー!走り去る音)
いやいや!
天才やん!すごい!って思いました。私は現在SPDを使用していますが、SPD-SLも練習しています。
SPDとSPD-SLの大きな違いは、クリートとペダルの固定力です。
クリートには3種類あります。
大雑把に説明すると赤が固定、青は赤よりは固定角度が甘い、黄色はさらに固定角度が甘いという感じです。
私は間を取って青にしましたが、SPDに比べるとものすごくガチガチで固定するのも外すのも勝手が違います。
うまく外れず車体ごと倒れてしまう恐怖を感じて実戦投入を躊躇しています。
この時点で共感できなくなってしまいました。
入部しておよそ1ヶ月の出来事です。
お話としてはとても面白いのですが、あまりにも自分と違いすぎて憧れるという事が全くありませんでした。
そしてなんだかんだトントン拍子にインターハイ出場し、トラブルがたくさんある中で迷惑をかけつつもそつなく大活躍する小野田くんに、化け物的な恐怖を感じました。
小野田くんだけでなく、自転車競技は激しくぶつかり合いをして流血したり罵りがあったり、勝手なルールで野良試合をしながら走ったりと、げに恐ろしき情報の目白押しです。
さらにライバル校の目立つ人物たちが【いちいち】口上を述べたり二つ名を披露したりとハイカロリーな情報を与えてくるのにも気をとられてしまいます。
もちろんそういうパワープレーは大好きです。
例えば、頂上の蜘蛛[ピークスパイダー]、呉の狂犬、箱根の直線鬼、眠れる森の美形[スリーピングビューティー]etc...
呉の狂犬卒業後、後輩として呉の陸鮫が登場した時は興奮しました。期待を裏切らない世襲制度です。
そんな俺が俺がという自己主張の中、主人公のチームメイトの鳴子章吉くんは観客から赤い奴と雑に紹介されてしまうのも個人的にはなかなか風流かなと思います。
面白さについてはそこそこにして、先に述べたような激しいぶつかり合いや落車事故、流血に失神もありロードレースとは格闘技であり誰もがやれることではないというイメージを与えられた気がしてしまったのです。
ロードレースは観るものであって自分が参加するものではない、と観客目線で楽しんでいました。
危ないし、痛いの怖いし、苦しいのは辛いという軟弱な考えです。
弱虫ペダルのキャラクターたちがそれぞれ魅力的でカッコよく、清々しく素敵であることも納得の上で、やはりロードレースは甘くないし1人しか勝ちがないということも辛い事であるという現実的な部分がフォーカスされると、ロードバイクというものは憧れだけで乗ってはいけないのではないかという気持ちににさせられたのです。
そこでロードバイク始めようと思った女子というのは単純にすごいしカッコいいんじゃないかと思います。
私は弱虫ペダルきっかけではロードバイクを始めることができませんでした。
どんなきっかけでも始めることや、体験してみることはとても大切なことです。
きっかけになる作品があったというのは、なんにせよ尊いものです。